今月のアーティストコラム2007-2008

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高橋美由紀『新作展に寄せて』 /2008-11

 片づけをしていたら本棚のすみに絵本を見つけた。5年前に自分でかいた絵本。自分でかいたものなのに初めて出会ったような感覚。「おもしろい☆」「こんなことを考えていたんだ…」とお話を楽しんだり、当時楽しく作っていた様子を思い出したりして素直に感動。嬉しくなった。しかし、感動するとともに、ふと戸惑う。。。気づかないうちに、いつの間にか忘れていくことがたくさんある。思い出すことさえできない時間がたくさんある。身体は時間を積み重ねているはずなのに、心では、消えてしまった時間をたくさん持っている。少し、さみしくなった。

 大切にしたい時間は思い出そうとしても思い出せないかもしれない。でも、何かがきっかけとなることで再びその時間にタイムスリップでき、思い出すごとにその時間に対する思いは強くなっていくもののような気もする。きっと、思えば思うほど大切なものになる。
 今回は、記憶の空間にタイムスリップできるきっかけとなる「扉」のようなものを見つけたくて制作にむかった。扉を開ければ、心地よい時間に空間にタイムスリップできるものを、5年前にかいた物語を今の自分と重ね合わせながら探した。

 大事にする、ということを大事にしたいと思う。

Artist Profile :
高橋 美由紀1978年 新潟県柏崎市生まれ / '01 新潟大学教育学部卒業 / '03 上越教育大学大学院学校教育研究科修了 /'03 個展(楓画廊)以後毎年 / '05 第73回日本版画協会展「賞候補」/ '06 個展(アート・デ・アートギャラリー・大阪)以後 '08 / '06 個展(美術サロンゆたか・金沢)以後 '07 / '08 個展(アートギャラリータピエス・神戸)/ 現在 無所属 柏崎市在住
「キャスト」
エッチング、一版多色刷り
21.0×30.0cm
額装 \25,200(税込)
「メロディ」
エッチング、一版多色刷り
21.0×30.0cm
額装 \25,200(税込)
「つながる想い」
エッチング、一版多色刷り
21.0×30.0cm
額装 \25,200(税込)
「となり。」
エッチング、
一版多色刷り
9.0×9.0cm
額装 \10,500(税込)

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宮井里夏『dipa-My Garden』 /2008-10

  9月のとある朝、約束の地エルサレムに私は降り立ちました。早朝のテルアビブはまだ暗く街は静まり返っていました。ホテルに着く頃には夜が明けはじめ、窓からは近代的に整備された海岸線とホテルのプールが見えました。
 テルアビブから死海へ向かう途中は市街地からだんだんと砂漠地帯へ変化し、聖書に出て来る“荒れ野”とはこれなんだと実感しました。見渡す限り白っぽい黄土色の土地、あまりに広大で畏敬の念と同時に絶望さえも沸いて来ました。照りつける太陽、体から失われてゆく水分、喉の乾き、その乾きは殉教者の切望にも重なるような気がしました。
 帰国して迎えてくれたのは温かい家族達と潤った土地、そして私の小さな庭。世話をする私に向かってさえも。
小さな刺をふりかざす愛するバラ達。色鮮やかな花を咲かせて私を出迎えてくれました。
 “My Garden”シリーズの植物達は私の庭の主役ではありません。庭の外から蔓を伸ばして侵入して来る葛や雑草達です。本来は憎い相手なのですが、その生命力の強さを現す葉脈や茎の勢いのある表情は、愛らしい花達よりも私の心をより揺さぶるものを持っているのです。“dipa”は心の依り所、光です。その光が今、憎い敵の中に見い出されるのは不思議な事です。
Artist Profile : 1964年 宮城県生まれ / '88 多摩美術大学卒業 / '90 武蔵野美術大学大学院版画専攻修了 /'94 「現代の版画1994」(渋谷区立松涛美術館)/ '94 平成5年度文化庁優秀美術品買上 / '95 「宮井里夏 垂直の影展」(リアス・アーク美術館・宮城)/ '99 VOCA展(上野の森美術館)/ '03 個展(楓画廊)以後 '05 / 現在無所属 宮城県気仙沼市在住
「My Garden d-3」
アクリル、紙
35.0×35.0cm
\105,000(税込)
「My Garden 12」
アクリル、紙
20.0×20.0cm
\52,500(税込)
「My Garden 16」
アクリル、紙
20.0×20.0cm
\52,500(税込)
「My Garden 2」
アクリル、紙
15.0×10.0cm
\26,250(税込)

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星野健司『逸脱の彫刻(下)』 /2008-9

 リードは『彫刻とはなにか』(ハーバード・リード著 日貿出版社)の中で、彫刻という特殊な芸術は記念物(モニュメント)
 と護符(アミュレット)という両端の間に発生したものであると述べている(第一章 p.16)。後に続く広範な理論の展開は、
 もっぱら彫刻芸術の発生学的叙述に費やされているが、私がこの章で啓示を受けたのはモニュメント(寺院や伽藍等)もアミュレット(禍悪に対し身を護る小さな呪物等)も共に神霊に関わるものの造形だった事だ。つまり彫刻の始原と神仏の崇拝は起源を同じくしている。
  ここからは自分の麗しい誤解の其之一なのだが、いわば日本の彫刻はその始まりから神霊の容器だったのではないか。良く知られている事だが、日本の神々は岩や巨木に依るものであり、又岳(やま)や河(かわ)それ自体が神の御姿であって、最初は人の形をした神ではなかった。やがて、日本に仏教が伝来し、仏像が招来され、寺院が建立されるのを追いかける様に、神社や、人の形(仏の形)を仮りた神像彫刻が作られるように成る。日本ではみ仏も新来(あらき)の神々であった。そして時代が下がり本地垂迹(ほんちすいじゃく)や神仏混交によりさらに日本の神々はあらゆる人形(ひとがた)に依って示現したのだ。
  日本の近現代彫刻史は明治期のラグーザ以来の西欧リアリズム彫刻の流れがその始まりであり、本流でもあった。それらはリアリズムで日本人の肖像を実現した。不気味なほど客体化された「日本人」の「像」を我々の先祖は見た。単にリアリズムと言うだけではなく、それは西欧近代(モダニズム)の匂のする神々、神無き時代、科学の祭壇に捧げられた供養像だった。
  又々麗しい誤解其之ニ。
  しかし、西欧近代リアリズム彫刻の容器に、日本の神々は依らない−と思う。表現すれば必ず余剰がでる−と思う。
  麗しい誤解其之三。
  松田優作は現代の神である。サングラスを掛けた現代日本の神なのである。優作の夢や蹉跌、彼が演じた人間像。突然断ち切れた様に逝ったその人生。日常性に垂直に侵入し飛び去っていく崇神としての優作。神霊の容器としての優作。反モダニズム。
  モダニズムから脱出し、神ながらの真正(しんせい)の神聖(しんせい)なる真摯(しんし)な彫刻を実現したいと思うのだ。

Artist Profile :
星野 健司1951年 新潟県生まれ / '76 多摩美術大学大学院彫刻専攻修了 /
'83 個展「星野健司 彫刻と素描展・不可思議の森」(新潟県美術博物館)/ '94 野外彫刻のためのマケット100展(新潟市美術館)/ '04 新潟の美術2004(新潟県立万代島美術館)以後 '06 / '04 個展(楓画廊)以後 '06 / 現在 無所属 新潟市在住
「第三ヴィーナス」
(獣頭の女立像)

鉄、鉄錆、ステンレス
座高170cm
「M・サングラスの男W」
ステンレス、鉄台座
w25.0×d15.5×h34.0cm
sold out
「眠るサイレーンU」
ステンレス、淡緑色水晶板
w9.0×d14.0×h8.5cm
\63,000(税込)
「泥棒の頭
(J・ジュネの頭部)」

ステンレス
w11.5×d9.0×h16.5cm
\63,000(税込)

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星野健司『逸脱の彫刻(上)』 /2008-8

 2000年から始めた肖像彫刻のシリーズ。最初の作品はサングラスを掛けた松田優作の頭像だった。以来哲学者で作家のジョルジュ・バタイユ。イタリアのポストモダン画家クレメンテ。南米の陽気な太っちょ画家ボテロ。詩人・映画監督で神聖コミュニスト、パゾリーニ。イギリスの偉大な画家ベイコン。それに悪七兵衛影清(コメントの仕様が無い)。泥棒作家のジャン・ジュネ。スイスの苦行僧彫刻家ジャコメッティと作り続けた。そして今も作るべき人物像を求め、あれこれと思索(試作)を続けている。
 自分が偏愛し、影響を受けた人物。それを現時点で検証する肖像彫刻のシリーズ。そんな意味付けをし、自ら納得し、そう思い込んで制作を続けて来た。だが、これは本当に肖像彫刻というものだろうか?近代的自我の肖像なのだろうか?
 巨匠と同列に話しをすれば哂われるに決まっているが、ロダンやマリーニやファッーニの超絶的な肖像彫刻。しかし、自分のそれは、彼らの技術の高さ、芸術性の深さを脇に置いたとしても、何か根本的な相違がある気がしてならない。もちろん、日本の高村光太郎や荻原守衛の追及した人物像でもない。
 そもそも、松田優作といい悪七兵衛影清(あくしちびょうえかげきよ)といい、ジャン・ジュネといい、一度も見た事も話した事も無く、それも一部は歴史上か伝説上か、夕霧に霞んではっきりしない人物までも取り上げている。モデルをま直にしてデッサンしたのでもモデリングしたのでも無い。若干の写真を参考に想像で作った。これが果たして近代彫刻としての肖像彫刻なのか?
 ラグーザの西洋彫刻移入に始まり、明治から現代まで続く日本の近代彫刻史の流れ。自分の作っているものは(「ライダー」シリーズも「神聖舞踏」シリーズも)このような潮流から大きく逸脱しているのではないかと考える様になった。モダニズムにもアカデミズムにも、更に言えばコンテンポラリーアートの国際主義からも大きく逸脱している。
 別様な、強烈な呪力に引き寄せられ、分岐し、伏流し、旱魃(かんばつ)の荒野を彷徨し、突然湧き出し奔流する。
 そのような彫刻で在れかし!  
(9月「逸脱の彫刻(下)」に続く)
Artist Profile :
星野 健司1951年 新潟県生まれ / '76 多摩美術大学大学院彫刻専攻修了 /
'83 個展「星野健司 彫刻と素描展・不可思議の森」(新潟県美術博物館)/ '94 野外彫刻のためのマケット100展(新潟市美術館)/ '04 新潟の美術2004(新潟県立万代島美術館)以後 '06 / '04 個展(楓画廊)以後 '06 / 現在 無所属 新潟市在住
「レダのエスキース」
鉄、ステンレス
w13.0×d17.0×h55.5cm
\262,500(税込)
「産む・幼神」
鉄、ステンレス、錆
w42.0×d42.0×h39.0cm
\315,000(税込)
「獣頭の女
(頭部レリーフ)」

ステンレス、握拳大
\63,000(税込)
「ナルキッソス」
鉄、ステンレス
w10.5×d14.0×h25.5cm
sold out

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小山まさえ 『版画展によせて』/2008-7

「ピアニストの夢」ドライポイント
16.5×21.0cm
\18,900(税込)
「海」 ドライポイント 12.0×29.0cm
\18,900(税込)
「遊びたい猫」ドライポイント
12.0×17.5cm
\12,000(税込)
「きっと感動するから…」と 知人に教えてもらった<国際宇宙ステーション/スペースシャトルをみよう>を見ているが
見える日と天気がなかなか一致せず 観る時間を忘れたりで まだ 夜空を移動する一等星ほどのステーションには
めぐり逢えずにいる。

 宇宙のこと・地球のこと・世界のこと・日本のこと・情報はすぐ手に入るのに 人間どうしのこと・人間のやることは
解らないことだらけ。 などと考えながら その解らない人間の不思議な行動や 意外な情景 アレハナンダロウ 
と見つめてしまう風景が おもしろい。

 今回 初めてプレス機を使う版画をやってみた。
 どういうことになるか分からなかったが ちゃんと<私の絵>になって ほっとしている。

 版画は もっと別なことを試してみたいジャンルではあるし しばらく色を使っていないので カラフルな絵も
描きたくなっている。

Artist Profile :
新潟県長岡市生まれ / '93 現代童画展「奨励賞」以後 '00 / '96 二科展 以後 '99 / '97 越後湯沢全国童画展「佳作賞」以後 '04 / '00 個展(ギャラリーZEN・長岡市)/ '02 個展(新潟絵屋) / '04 個展(楓画廊アネックス)/ '06 個展(楓画廊)/ 現在 無所属 新潟市在住

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猪爪彦一 『アトリエのこと』/2008-6

 我が家から歩いて5分ほどのところにアトリエはある。アトリエといっても元は倉庫で、使わなくなったスペースを改造して制作の場にしたのだが、今ではその建物のほとんどを専有するようになった。約30年通い続け、広いと思っていたスペースには、キャンバスや物があふれてきている。
 アトリエにただり着くとまずオーディオのスイッチをいれる。儀式のようなものだ。こうすることで生活感覚から制作のチャンネルに切りかわる。
 今はとりたてて何かを表現したいという事ではなく、この空間に身を置いて、絵のことなどをゆっくり考えることがなによりも楽しみになっている。
 10年ほど前、その倉庫のまえに銀杏の小さな苗木を植えた。今では私の背よりも高くなった。門番のように直立している姿をこのごろはたのもしく思う。

メモ/
 私も時々猪爪さんのアトリエへおじゃますることがある。
この30年間で周囲の様子は様変わりしたに違いない。新幹線の高架が出来田園風景が分断され、最近ではJR越後線に内野西が丘という新しい駅が作られ、宅地造成が進んでいる。
猪爪さんにとっての原風景が失われつつある。(M)

Artist Profile : 猪爪 彦一
1951年 新潟市生まれ / '81 第36回行動美術展「行動美術賞」 / '82 第25回安井賞展(以後8回入選) 第37回行動美術展「安田火災美術財団奨励賞」(会員に推挙される)/ '89 「新潟の絵画100年」(新潟市美術館) / '02 個展(楓画廊)以後 '03〜'06 毎年 / '04 「新潟の美術2004」(新潟県立万代島美術館)以後'06 / 現在 行動美術協会会員 新潟市在住

「風」
ガラス絵 FO
\84,000(税込)
「夜のオブジェ」
ガラス絵 SM
\105,000(税込)
「ある王女の肖像I〜V」
ガラス絵 FO
\84,000(税込)
「ある王女の肖像I〜V」
ガラス絵 FO
\84,000(税込)
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白木ゆり『版画と筆と油画』/2008-5

私は美術学校の卒業制作で版画を選択した。
版画を主に、制作・発表を続け、早や20年の時間が経った。

版画を制作するプロセスの中で、筆と黒ニスという油性の液体を使う部分がある。(防触用)
版画には直接現れないことの多いこの過程の作業を私はとても好んでいる。

私と筆と油性の絵の具は、やはり離れることは出来ないようで、最近、寝室の隣にやっと小さいながらもアトリエという部屋を持つことになり、油絵の制作が日常の中に組み込まれるようになった。20年ぶりの油絵制作の再スタートである。

版に向かう意識も、何かが変化してきたように思える。

絵画の多層空間の中で精神をどのように内包させるか。
それはどのように現れるのか。
意識と無意識と、それを意識していく中で新たな世界へと進んで行ければと考える。

Artist Profile : 白木 ゆり
1966年 東京生まれ/'87 女子美術短期大学造形学部絵画卒業/’89 女子美術大学芸術学部洋画(油絵)専攻卒業/’91 多摩美術大学造形学部版画科研究生修了/’99 銅版画家トリエンナーレポーランド「ルビン市長賞」/’01個展 (楓画廊) 以後’03,’05/現在 無所属 東京都在住

「Spring(a)」
油彩、キャンバス
F3
\63,000(税込)
「Spring(f)」
油彩、キャンバス
F0
\31,500(税込)
「Spring(4)」
エッチング、
ディープエッチング
29.0×16.5cm
\29,400(税込)
「Spring(6)」
エッチング
29.0×16.5cm
\29,400(税込)
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浅見陽子『私が描きたい風景- “小鳥のはなし”』/2008-4

 ある朝いつもより少し早く目が覚めた。窓を開け深呼吸。東京のほぼ真ん中、下町。背の高いビルと古い民家が薄桃色に染まった空をバックに凸凹のリズミカルな影をつくっていた。
 ふいに、ひとつの小さな影が目の前を「スーッ」と横切り、古びた瓦屋根の上のアンテナに止まった。そして朝焼けの中、シルエットが唄い始めた。東京で暮らし始めてからというものハトとスズメ以外の鳥の声を久しく聞いていなかった。何だか心が洗われる気がした。
 翌朝、同じ時刻に窓の外を覗くとアンテナの上には昨日と同じ影がひとつ。まるで“フイゴ”の様に体を大きく小さくしながら懸命に唄っていた。
 3日目の朝、外は霧雨。もやがかかっている。今日も一羽だけ。何だか叫んでいるように観えた。輪郭のばやけた朝を切り裂くかの様な声だった。
 4日目、いつしか早起きになっていた自分に気づく。今日も鳴いているので少し安心した。でも…、「何故こんなに鳴いているのだろう?もしかしたら誰かが鳴き返すのを待っているのだろうか?」小鳥はひとしきり鳴き終わるといつもと同じように飛び立っていった。少しせつない美しい風景だと思った。

Artist Profile : 1970年新潟県新発田市生まれ /'98 サザンイリノイユニヴァーシティ卒業/’01 個展(新発田)/ ’03 個展(楓画廊)以後 '05’06/’04 個展(ギャラリーEMU-st・新潟市亀田)/’06 個展(ギャラリー6坪・十日町市)/現在 無所属 東京都在住

「Fred」
アクリル、キャンバス 
SM
sold out

「Moon Dance」
アクリル、ボード 
21.0×14.8cm
sold out

「I Know …」
アクリル、ボード 
29.7×21.0cm
sold out


「TRIO」
アクリル、キャンバス 
F3
\31,500(税込)


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井上厚『愛犬チョコのこと』/2008-3

 息子がまだ幼かった頃から、いつか犬を飼うことを約束していました。息子の喘息もあり、東京の西方に位置し、山々を見渡せ、自然に囲まれたのどかな景色の残る青梅に中古の住宅を買い転居しました。狭いながらも庭もあり、犬を飼う条件の一つは満たしましたが、自営業(版画と浮世絵の修復)の我々にとって犬の世話で時間を取られることは死活問題でしたし、経済的な問題もあり、なかなか踏み切れずにいました。そうこうしているうちに息子も中学生になり、思春期でいろいろと難しくなってきましたので、そろそろ犬を飼おうかと話ていました。もし飼うとしたら、ペットショップで買うのではなく、保健所で引き取り手を待っている可哀相な犬の中から選ぼうときめていました。そんな折りに誕生日のプレゼントは何が良いか息子に尋ねると「蟹が食べたい」とのことでしたので、普段はめったに行かない魚屋の入っているスーパーまで蟹を買いに行きました。そこで“ビーグルミックスの子犬差し上げます”の張り紙を目にした瞬間からプレゼントは可愛いに違いない子犬とささやかな蟹に決定しました。早速連絡を取り母犬と子犬たちを見に行き、まだ目も開いていない可愛い群れの中から一番小さくてビーグルらしい子を、家族全員の合意により選びました。2005年の11月13日に生後50日で我が家にやってきたチョコ(息子が命名)の可愛さに皆が癒されました。青梅の冬は寒いので、当面は屋内で飼うことにしたこともあり、本当に密着して暮らしました。靴下の争奪戦は日常飯事で、しつけは大変でしたが、それに倍する喜びがあり、生活に潤いを与えてくれました。一人っ子の息子は幼い弟を慈しむように可愛がり、テストの成績が悪かった時に真っ先に報告するなど精神面でもとても救いになっていたようです。一日二回合計で最低でも1時間、長い時は3時間の散歩は欠かしませんでした。その散歩は、我々夫婦の心身を健やかにしてくれたと同時に、四季折々の花々や、風の微妙な温度の違い、時間を追って変化する空や雲の色や形を楽しむことを教えてくれました。また、散歩中に出会う多くの犬や猫と遊びたかったチョコは、成長とともに、出会う犬や猫達が全て自分の友達になってくれるわけではないことを学びました。それでも穏やかで自分から吠えるようなことは殆どなかったチョコには、たくさんの友達が出来、微笑ましい交流を見せてくれました。その中には、チョコとしか触れ合えないという犬達もいました。沢蟹やカマキリ、蛇に出会ったときの反応も面白く思い出せます。チョコがまだ室内犬だったころに、かねてから念願のアトリエ(ガレージに高床式の建築)が出来上がり、夏に外犬となったチョコを見下ろしながら制作が出来るようになりました。夏には風の通る場所へ、冬には少しでも日の当たる場所に二〜三回の移動も、気持ちよさそうに昼寝する姿を眺めると苦にはなりませんでした。アトリエのドアの前にしか日が当たらない時にはかなり邪魔でしたが…。チョコが大好きだったことの中でもかなり上位に入ると思われるのが、雪の上を自由に走り回ることでした。2008年2月2日から3日にかけて降った雪は、青梅でも10センチ以上積もったので、3日には近所の公園で、誰も来ないのを確認してから放してやると、実に楽しそうにぐるぐると全速力で旋回してから、遊ぼう、遊ぼうとせがむので、右に行くと見せかけて左に行ったり、急転回したりといつものようにフェイントを交えての追いかけっこをたっぷり朝、夕の二回楽しみました。翌日には晴れていましたが気温が低かったので、雪の表面が凍って少し硬くなっていました。でも、年に数回あるかないかのチャンスなので、前日と同様に遊んだ後、棒の代わりに雪玉を投げてやると、一生懸命追いつくのですが、雪玉はすっぽり雪に埋まって見えなくなってしまうので不思議そうにしていました。何度やっても結果は同じでしたが、最後には雪玉を掘り出してかじってしまいました。その日の夕方に突然悪夢が起こりました。妻が散歩に出てからわずか数分後に、同じ町内に住んでいる心無い飼い主が連れていた三頭の猟犬に襲われて、チョコが命を落としたのです。まだ2歳と4ヶ月でした。ペットの救急病院に駆けつける車の中で呼吸が止まったようで、大勢の獣医師による懸命の救命措置も、息が出来ずに見守った家族の願いも届きませんでした。その日から、家族の一人一人が、悲しみや悔しさと戦いつつ、チョコが残してくれたかけがえのない思い出に感謝しながらそれぞれの日々を送っています。チョコと過ごした楽しい日々から生まれた作品を、お楽しみいただけましたら幸いです。
  
Artist Profile : 1962年東京生まれ/'88 東京藝術大学大学院版画専攻修了/'89 第4回中華民国国際版画ビエンナーレ展「佳作賞」/'90 現代の版画1990(渋谷区立松涛美術館)/'03 第3回飛騨高山現代木版画ビエンナーレ展「奨励賞」/’03 個展(楓画廊)以後 '08/他 福原画廊(東京・銀座)を中心に個展開催/現在 日本版画協会準会員 東京在住
 
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北條佐江子『神話のはじまり』/2008-2

  「神話なしにはあらゆる文化はその健康的な創造的な自然力を失う。神話をもって囲まれた地平が、初めてひとつの全体の文化の運動を統一にまとめあげる」。ニーチェはこんな風に神話を語る。青木繁の「海の幸」という絵の前で覚えた、感動とは異なる不思議な動揺。絵は黄金の光を放っていた。さまざまな人間の根源的な感情を表現する色を含み、宇宙の創造、生命の神秘、芸術を解き明かす謎さえ秘めているように感じた。その後神話という言葉は感情の中に住み、イメージと観念の間を浮き沈みながら、造形的手段を通して形象化されることを望み、概念の結晶化を何十年も待つことになる。
 時や民族を越えて生まれた神話は共通の構造を持つ。超自然的な存在は人格化され世界を支配し、神聖なものとして崇められ、宗教的性質を帯びていく。宇宙を象徴する神、それにはよく宇宙木が付属する。太陽・月・聖獣・度量衛・天上星・下界の神々。シンボル化された形はいずれも酷似している。神話のイメージは造形的象徴というイメージの体系によって、同じように発達するといわれている。これは何故なのか。共通のイメージは何を意味するのか。神話に挑戦していきたい。今は単なる場面や現象の模写であったり、背景にある観念を絵画的にアレゴリーしたものにすぎない。しかし「海の幸」の前で感じた青木の中からほとばしる神話の世界のように、この身をけずって出てくる神話、命の神話をいつか描いてみたい。

Artist Profile: 1951年新潟県生まれ/'72 女子美術短期大学造形学部グラフックデザイン科卒業/'73 女子美術大学造形学部絵画専攻科修了/'90 個展(大手通ギャラリー・長岡)/'93 第2回人間賛歌大賞展 「佳作賞」(埼玉県北里研究所主催) '96 第3回人間賛歌大賞展「奨励賞」/'04 個展 (楓画廊アネックス)/ ’05 個展(楓画廊)以後 '07/現在 無所属
「大きな木の下で」
ミクストメディア、ボード F15
sold out
「神話のはじまり」
ミクストメディア、ボード F4
\84,000(税込)
「空へ」
ミクストメディア、ボード SM
sold out
「出現」
ミクストメディア、ボード
30.0×30.0cm
\84,000(税込)
 
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大貫真寿美/2008-1

「そこに居たNo.2-黄-」
油彩、キャンバス SM
\31,500(税込)

 
「青い屋根」
水彩、紙 14.0×10.0p
\18,900(税込)

「空と海との間」
木版 20.0×16.0p
シート \13,650(税込)
 そこに存在するのに見ていない
見えるはずなのに知覚していない
時間と物事に追われ、こなすだけの自分
笑顔もある、楽しいこともある
笑っている
でも、確実に鈍く緩やかにくすんでゆく
しかし、それすら気がつかない怖さ
緩やかに鈍く澱のように沈殿してゆく
何かひどく汚いもの、醜い想い
見てみない振り
そんなの自分にあるなんて認めたくない気持ち

一瞬の光
輝き
静寂なもの
微光を放つ、さりげない物事
それらが思いがけず飛び込んで来たとき
悪い魔法が解けたように物が見えてくる
美しさに心打たれる自分に
異常なまでの安堵
「ああ、まだ大丈夫」

同時にそれ以前の自分が怖くなる
覆いかぶせてしまいたい事実
それに慣れてしまっている怖さ

感性が鈍くなることの怖さ
感性が呼び戻された喜び…そして怖さ
嬉しい、怖い
嬉しい、怖い
嬉しい、怖い

今はこの繰り返しに支えられて
少しの差で喜びと輝きが勝っている
感じるって、やはり凄い
なんだか、怖くて凄く嬉しい
Artist Profile: '65年東京生まれ/'88年多摩美術大学絵画科油画専攻卒業/第56回日本版画協会展 (以後毎年)/'90年多摩美術大学大学院研究生修了/'95年プリンツ21グランプリ展「特選」/'96年個展 (ガレリア・グラフィカbis・東京 銀座)以後隔年で開催/'97年木版画集「さじ」刊行/'01年個展 (楓画廊)/ 以後’02'04/'04年木版画集「pairs ・・・対なもの・・・」刊行/現在日本版画協会準会員/東京都世田谷区在住
大貫 真寿美
 
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高橋美由紀『あたらしい一日がはじまる』/2007-11

               
 
あたらしい 一日が はじまる
まわりの音から まわりの景色から 全てから遮断された時間にいた自分が
何かに 引きよせられるように ふわっとゆらめく風に つつまれるかのように
いつのまにか自分をとりまく世界に 身をゆだねていることがある。
目の前のことが 透きとおったフィルターだけを通って
ずーっと 身体に沁みこんでくる
身体が 空間の一部として そこに ある感じ
そこで あたらしく さっぱりした自分がいるのを 実感する
そして 遠く かなたまで 時間も空間もとびこえて 想いをはせる
すると 時に 記憶までも 変わっていく

そんな風に 記憶は新たに 積み重なり
そこからまた あらたに今日がはじまる
日々の中での 小さなきづきが
今までの 記憶を 価値観を 想いを 少しずつ変えてくれる。

10年ぶりに 育った土地に 帰ってきた
そして ここで 1年が過ぎた
昔 ここで過ごした日々を 想う
ここを離れて過ごした日々を 想う
すべての 時間を いとおしく 思う
すべてが たからもの のように思える そして
ここから また新たに はじまる時間も たからもの なのだ
そんな 変化する瞬間、心地いい、なんとも言えないはじまりを 描きあらわせたら と思う
 
Artist Profile: 1978年新潟県柏崎市西山町生まれ/'01新潟大学教育学部卒業/'03上越教育大学大学院学校教育研究科 修了/'03個展(楓画廊)以後 '04,'05,'06/'05第73回日本版画協会展「賞候補」/'05個展(美術サロンゆたか・金沢)以後'06/現在 無所属 柏崎市在住
高橋 美由紀
 
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星野健司『影清(盲目の男)』/2007-10

「影清(盲目の男)」
鉄に ステンレス、黒檀台座
 d 110×w 95×h 215mm 個人蔵
 
 影清(盲目の男)
 影清とは悪七兵衛影清である。平家の豪傑影清である。平家滅亡後日向に流され盲目になった影清である。
ほほーう。で、なんで影清なの?どうして肖像彫刻シリーズなの?…別に特に意味は無い。いやぁ、そんな事あるまい。きっと右傾化の表れだろ。まったく保守に回帰しておる。次は西郷隆盛なんか作るんじゃないか、教育基本法も改正された事だし。最近やばいゼ。そうよそうよ、この頃ちょっと変よ!…ギャラリーはとかく蒼蠅い。
 唐突だが、影清といえば夏目漱石の『行人』の中に影清に関する逸話が出てくる。小説の主人公の父親が、客を交えた謡のおさらいの後の座興に、自分と、ある後輩の関係したゴシップを語って聞かせる下りがある。それはある盲目の女と、その後輩との過去の秘事であった。父親は「影清を女にしたやうな」と言っているが、ここに影清が出てくるのだ。しかし、「謡のおさらい」という巧妙な伏線を張ってでも漱石が引き出したかったのは本当は「影清」ではない。それは何か?それは「盲目」という存在である。漱石の小説には盲目の人物が鮮やに作中を横切る『彼岸過迄』の中で僅か三行だが「男とも女とも方の付かなひ」盲目の人物が出てくるのをご存じか?そしてここに初期の『夢十夜』の「第三夜」を加えれば、漱石における盲目の偏愛と象徴性は俄に輝きを放ってくるのである。
 ほほーう。で、なんで影清なの?!
 
Artist Profile:1951年 新潟県生まれ/'76 多摩美術大学大学院彫刻専攻修了/'83「星野健司 彫刻と素描展・不可思議の森」(新潟県美術博物館)/'00 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2000/'04 「新潟の美術2004 新潟の作家100人」(新潟県立万代島美術館)以後 '07 /'04 個展(楓画廊)以後 '06/現在 無所属 新潟市在住
星野 健司
 
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中村一征 『ハナノカタチ』 / 2007-9

はな '07(ノコンギク)」 膠彩、和紙
 P4 ( 33.4×22.0 cm) \42,000(税込)
 
はな '07(スミレ)
膠彩、和紙 SM sold out
はな '07 (シラヤマギク)
sold out
はな '07 (ノコンギク)
膠彩、和紙 8M \67,200 (税込)
花の絵について
 路傍の小さな草の花からヒトの手の懸かっ
た栽培種の名花まで、ナマミの生きた花は美
しい。
 湿り気を帯び、指で触れるとひんやりとし
た呼気が伝わるような生きた花は、しっとり
とした輝きを有っている。
 絵は、紙、鉱物質の色料などでなりたち、
生きた花とはかけ離れた無機的なものでつく
られる。
 画紙の上に色料を重ねる度、一時的ではあ
るけれども水気を帯びた画面となる。鉱物質
の色料は展色剤となる膝水の水分により輝き
を増す、支持体の紙もしっとりと潤いを帯び
やわらかさを増す。水気を帯びた生きた花と
一時的であるにせよ近しい状態になる。

無機質なもにに依る絵画という制約のなかで
ナマミの花を追いかけるような法はもたない。
ホンモノの花とのほんの僅かでも確かな接点
を探しながら私の花の絵は描かれる。
07/08/31
 
Artist Profile:1968年新潟県阿賀野市生まれ / '90 東海大学教養学部芸術学科美術学 過程卒業 / '94 個展 (Gアートギャラリー・東京 銀座) / '97 以降個展を中心に活動 / '02 個展(楓画廊) 以後 '04, '06 / '03 『花・華・はな3人展』(楓画廊)以後 '05 / 現在 無所属 新潟県阿賀野市在住
中村一征
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釣谷幸輝『注文の多い動物園』/2007-8

 
 「注文の多い〜」と言えば、ご存知宮沢賢治ですが、今回はあえて、来廊されたお客さ んに幾つかの注文をお願いすることにしました。日頃、画廊という空間で展覧会をやって いて、どうしても敷居が高い、といった感覚を否めないでいたので、来てくれた方にもっ と楽しんでもらいたい、しかも作品をしっかり鑑賞してもらった上で、その反応も知りた い、という作家からのわがままを聞いていただくことにしたのです。
 展示作品の内容は、動物園企画にちなんだあ新作数点と、1999年以降に制作した動物がモ チーフの銅版画作品が並びます。どこかで会ったような人物、いつか見たような風景にあ らたな物語を加えていただければ幸いです。どうかくれぐれも入場券とカメラは忘れずに お持ちください。(もちろん無料です。)
 今展覧会は富山、金沢についで3回目の展示です。会場ごとに多少変化がありますが、ど うぞお楽しみください。別にとって食おう、という訳ではありませんので、どうぞご安心 ください。
 
Artist Profile:1967年 富山県生まれ / '92 金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科終了 / 個展を中心に活動(富山・金沢・神戸・東京)/ '01個展(楓画廊)以後'03,'05 / '07 文化庁在外研修でイギリスへ / 現在 無所属 富山市在住
釣谷 幸輝
 
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星野健司『ジャコメッティ(A・ジャコメッティの肖像)』/2007-7

「A・ジャコメッティの肖像」 ステンレス
 d 26.0×w 20.0×h 25.0cm sold out
 
 アルベルト・ジャコメッティの細くひょろ長い人体彫刻に強烈に印象を受けたのは 昭和四十四、五年、高校生の頃だった。美術の教科書の写真図版でだ。それから図書 館で矢内原伊作のジャコメッティの本を読んだ。そこに書かれていた求道的で禁欲的な 生活。矢内原をモデルに深夜に及ぶ制作のドラマ。田舎の高校生をシビレさせるの には十分だった。畏敬と羨望と快い不安。密かにその彫刻家を真似たいと願った。毒が 回ったのだ。
 あれから幾星霜。真面目な高校生も人生に磨耗し、加工され、裏も表も知ったつも りで皺を刻み、彫刻を刻んだ。「少年老い易く」の一節が朝晩脳裏に去来する。
 今回、肖像彫刻を造るのに参考にした写真は1973年東京西武百貨店で開催された ジャコメッティ展の巻頭のそれである。1973年と言えば昭和四十八年。田舎の高校で 図版に大感激してから三・四年。あの時の彫像たちが、会場のデパートで、いささか 場違いのように屹立していた。私は見た。針のように細く、イライラする、紛らうこと なき虚無の揺らめきを。そして、三メートルもあろうかと思われる古代遺跡の孤独を。
 
Artist Profile:1951年 新潟県生まれ/'76 多摩美術大学大学院彫刻専攻修了/'83「星野健司 彫刻と素描展・不可思議の森」(新潟県美術博物館)/'00 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2000/'04 「新潟の美術2004 新潟の作家100人」(新潟県立万代島美術館)以後 '07 /'04 個展(楓画廊)以後 '06/現在 無所属 新潟市在住
星野 健司
 
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星野健司「泥棒の頭(J・ジュネの頭像)」/2007-6

「泥棒の頭(J・ジュネの頭像)」
ステンレス、黒御影石台座
 d11.5×w9.0×h16.5cm \63,000(税込)
 
「パゾリーニの仮面(マスク)」
鉄、ステンレス、黒御影石台座
d8.2×w13.0×h23.0cm \105,000(税込)
 泥棒詩人ジャン・ジュネの事は澁澤龍彦の本を読んで知った。上京して貧乏学生をやっていた頃だ。澁澤訳ではなく、安い文庫本の『花のノートルダム』(新潮社)を買って読んだ。堀口大學訳。その比喩の華麗流麗、そして奇抜さに舌を巻いたのを覚えている。
 下宿暮らしの私は、進取の気性激しいネイティブな東京の友達(やつら)に後れてはならじと(なにしろ新潟は後進国だったからね)せいぜい突っ張らかって生きていたんだ。でなければやられっぱなしだ!ジュネの話題では、連中の衒学的な(ペダンティック)会話に無理やり割り込んで、「あいつの破格な類音喚起や観念連合はまったく連合赤軍だぜ」とか、「ジャンジャンと贋の宝石をばらまいた様な散文を書くからジャンジャン・ジュネって言うんだな!」とか。澁澤の評論文の換骨奪胎、取捨誤入?自由自在の融通無碍でけむに巻いた。自由ヶ丘のガード下の赤提灯だった。反体制だった。革命の幻想だった。それほど屈託していた。嵐の去った後の70年代の夏だ。
 あの時から、日本も自分も大きくかわったと思う。明確に舵を切ったという自覚も無いまま。
 ジュネは残るだろうか。それともサルトルの方が先に歴史の舞台から去るのだろうか。澁澤龍彦は。江藤淳は。日本のアートはどうなるのだろう?新潟の作家たちは生き残れるだろうか?
 
Artist Profile:1951年 新潟県生まれ/'76 多摩美術大学大学院彫刻専攻修了/'83「星野健司 彫刻と素描展・不可思議の森」(新潟県美術博物館)/'00 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2000/'04 「新潟の美術2004 新潟の作家100人」(新潟県立万代島美術館)以後 '07 /'04 個展(楓画廊)以後 '06/現在 無所属 新潟市在住
星野 健司
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「もうひとつの時間」 杉原伸子/2007‐5

「ヒナタノオト」 岩絵の具、和紙
 59.5x84.0cm \210,000(税込)
「遺跡−空をつなぐ塔」 陶
21.0x30.0x22.0cm \63,000(税込)
「安らぐ場所」 水彩、和紙
14.8x10.0cm \21,000(税込)
「芽吹く頃」 水彩、和紙
10.0x14.8cm \21,000(税込)
 日常の時間とはちがう、季節の移ろいの中で静かに時を重ねる「もうひとつの時間」。そのゆったりと確実に流れている「もうひとつの時間」の中で、拾い集めた季節の断片たち。それらは耳に届かない音だったり、目には見えない形となって、私の記憶の底に降り積もっていく。

 日本画では、その記憶の底に沈んだ光景を掘り起こしながら描いています。
 水彩では、自然と人とのつながりを描いています。それらは、自然の一部が人と重なり合うこともあれば、自然というシステムの中で、育てる人として登場することもあります。
 立体では、自然と人とが対話していたという痕跡を表現しています。それらは「遺跡」という形となって現れることが多いです。
 いずれも「もうひとつの時間」をテーマとし、表現したい事を一番近い形で表せる素材を選んで、その素材でしか表現できないものを制作していきたいと思います。
 
Artist Profile:1972年 新潟県新発田市生まれ/'93 春季創画展(〜'96)/’96 個展(同和火災ギャラリー・東京)/'97 武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻日本画コース修了 藍染め工房「壷草苑」にて染色を学ぶ(〜'99)/'02 個展(楓画廊)以後 '04/「花・華・はな3人展」(楓画廊)以後 '05/'06 「10人の人物像展」(楓画廊)/現在 無所属 東京都青梅市在住
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『霧の日』 瀧谷美香 / 2007-4

「霧日」 油彩、キャンバス
 F30(90.9×72.7cm) sold out
「浮光」 油彩、キャンバス
M8(27.3×45.5cm) sold out
「吊球」 油彩、キャンバス
 F4(24.3×33.4cm) sold out
「残像」 油彩、キャンバス
P6(27.3×40.9cm) sold out
 その日はまるで生き物の中にいるようだった。
 妙に生ぬるく、過剰な湿度に息苦しさがまとわりついた。1メートル先が淡い、白 い闇。霧にすっぽりと包まれていた初夏の夜である。
 光が空気の中の水滴に乱反射する様は、雨が見せる空気感と近似していた。ただ、 道路上に溜まりゆく水音が無い。光が浮遊し続ける視覚と生々しい温かい触角、加え て微音という聴覚が日常感覚を麻痺させ、すべてが虚像の時間に思えた。
 盲目的な像が記憶を呼び込み、無意識のうちに確かに、今まで描いてきた雨の景色 を霧の中に見ていた。描くことは、記憶を体の中により強く留める行為だと思ってい たが、その事を体感によって再認識した瞬間であった。
 強いイメージを残した霧の記憶は、今後また反芻され、他の景色を見るときにも何 かしらのきっかけで連鎖し、様々な物に再度現れるのだろう。そして、重ねあわされ たその中で初めての画面を手繰り寄せ、今あるものにまた新しい色と意識を見せてく れる。
 絵を描くということは面白い。
 
Artist Profile:1979年 新潟県上越市生まれ / '02 個展(楓画廊)以後 '03, '05, '06 / '04 新潟大学大学院教育研究科美術教育専修修了 / '05 Field of Now『現代精鋭作家展』(洋協アートホール・東京) 個展(美術サロンゆたか・金 沢)以後 '06 / '06 第8回雪梁舎フィレンツェ賞展「佳作賞」 / 現在 無所属
瀧谷 美香
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